五島列島の漁師の年収事情とは?

五島列島で漁師として働くことに興味はあるけれど、本当に生活できるほど稼げるのかと疑問に感じる方は少なくありません。実際、海の恵みに支えられたこの地域では、漁師の年収に大きな差があり、漁法や季節、経験年数などによって収入が大きく変動するのが特徴です。

「離島での暮らし=不便で収入が少ない」というイメージを持たれがちですが、それは必ずしも事実ではありません。漁業が盛んな五島列島では、特定の漁業に従事することで年収1000万円を超えるケースも確認されています。

実際に地元漁協や自治体が発表しているデータによると、五島列島ではマグロやイカなどの高単価漁種を狙う漁師が安定した収入を得ています。中には、都市部のサラリーマンを上回る年収を実現している人もいます。

「五島列島で漁師になる=低収入」という先入観は捨てるべきです。

この記事では、年収のリアルな実態から稼げる漁法ランキング、そして移住支援まで詳しく解説していきます。

この記事で分かること

  • 五島列島の漁師の平均年収と全国平均との比較
  • 収入が高い漁法トップ5とその特徴
  • 稼いでいる漁師に共通する工夫や戦略
  • 年収を左右する要因と収入アップのポイント
  • 移住支援制度や未経験から漁師になる方法

五島列島の漁師の平均年収と全国比較

五島列島の漁師の平均年収はいくら?

五島列島で漁師として働く人の平均年収は、おおよそ300万〜600万円とされています。漁業の種類や規模によって差はありますが、小規模漁業でも年間収入500万円前後の例は珍しくありません。漁法や漁獲対象によって大きく変動するため、収入の幅があるのが特徴です。

日本全国の漁師と比較して高い?低い?

農林水産省の統計によると、全国の平均的な漁師の年収は約410万円です。これと比較すると、五島列島の漁師の収入は全国平均と同程度かやや高めといえます。特に、五島ではマグロやイカなどの高単価魚種を狙う漁師が多く、漁獲が安定している点が強みです。

年収の差が生まれる理由とは?

同じ地域内でも年収に差が出る理由は複数あります。代表的な要因は以下のとおりです。

  • 漁法の違い(延縄漁、定置網、一本釣りなど)
  • 保有する船のサイズと性能
  • 出漁回数と操業時間
  • 販路の確保(市場出荷・直販など)

特に販路の工夫が収入に直結します。

自らブランド魚を立ち上げるなど、差別化に成功した漁師は高収入を実現しています。

地域特性による収益構造の違い

五島列島は黒潮の影響を受ける好漁場であり、多種多様な魚が獲れるエリアとして知られています。漁場が近くにあるため燃料費が抑えられ、出漁回数も増やしやすいのが特長です。また、観光客向けの漁業体験や漁師民宿との兼業も見られ、地域全体で収益モデルを築いている点が他地域と異なります。

若手・高齢者など年齢別の収入傾向

若手漁師はスタート時こそ年収300万円前後が一般的ですが、3年ほどで収益が安定し、40代には年収600万円以上を得るケースもあります。一方で、高齢の漁師は規模を縮小していることが多く、年収は200万〜350万円程度に落ち着く傾向があります。後継者不足の対策として、地元の漁協では若手支援制度を拡充中です。

年収が高い漁業の種類ランキングTOP5

1位:クロマグロ漁(延縄漁)の収益力

五島列島で最も収入が高い漁業は、クロマグロの延縄漁です。1匹あたりの市場価格が高く、東京・築地市場ではキロあたり5,000円以上になることもあります。漁期が長く、漁獲量も安定しているため、年間で1,000万円以上の収入を得る漁師も存在します。

2位:イカ釣り漁の収益と季節性

五島列島はスルメイカやアオリイカの好漁場として知られており、特に夏場から秋にかけての漁期が稼ぎ時です。イカは直売ルートでも人気があり、1日の水揚げで10万円以上を記録することもあります。漁具のコストが比較的低いため、利益率が高いのも特長です。

3位:タイ・ブリなど養殖業の実態

五島列島では、タイやブリなどの養殖業も年収上位に入ります。出荷時期を調整できるため市場価格の高い時期を狙って出荷でき、年間収益は700万円前後を見込めます。ただし、餌代や設備投資がかかるため、

初期投資と運営管理のスキルが必要です。

4位:アワビ・ウニの潜水漁の稼ぎ

アワビやウニは高級食材として取引され、小規模でも高収益を生む漁法です。特にアワビはキロ単価が高く、1回の潜水で5〜10万円相当の収穫が可能な場合もあります。ただし、潜水技術が求められ、体力的な負担も大きいです。

5位:カツオ一本釣りの収益と課題

カツオの一本釣りは、五島列島でも伝統的な漁法の一つです。鮮度が高く、直売やブランド化に成功している事例もあります。ピーク時には1日で数十万円の水揚げもありますが、

漁獲量が年によって不安定で、収入に波がある点に注意が必要です。

稼げる漁師の特徴と共通点

高収入を実現している漁師の習慣

稼いでいる漁師の多くは、毎日の出漁記録や天候・潮流のメモを欠かしません。経験に頼るだけでなく、データを蓄積し活用することで漁獲率を高めています。また、漁の前後に船の整備や漁具の点検を習慣化しており、トラブルによる損失を最小限に抑えています。

漁法・装備の最適化と効率重視

効率のよい漁法を選択することが、収益に直結します。たとえば、延縄漁や定置網漁を使い分ける漁師は、安定的に利益を上げやすい傾向があります。漁具やGPS機器、魚群探知機などを最新のものに更新し、燃料コストとのバランスも意識しています。

市場・流通との強いコネクション

漁協だけに依存せず、個人で築いた販売ルートを持つ漁師は年収が高い傾向にあります。例えば、飲食店や仲卸と直接取引を行うことで中間マージンを抑え、1キロあたりの単価が通常の1.2〜1.5倍になるケースもあります。

若手漁師のSNS活用と直販戦略

近年では、SNSやECサイトを活用して自ら魚を販売する若手漁師が増加しています。InstagramやX(旧Twitter)を通じて漁の様子を発信し、「信頼できる漁師から買いたい」という消費者心理に応える戦略です。フォロワー数千人規模の漁師も存在し、月収ベースで50万円を超える例も見られます。

地域との連携で成功している事例

地域の観光業や教育機関と連携し、体験型漁業や地産地消の推進に関わる漁師も増えています。たとえば、

地元の小学校で漁業体験教室を開くことで地域の信頼を得ている漁師

もいます。結果として、自治体や団体からの支援が得られ、活動の幅が広がっています。 

年収を左右する5つの要因とは?

資源量と漁獲高の変動

五島列島の漁師の年収は、海洋資源の量に大きく左右されます。たとえば、近年イカの資源量が全国的に減少しており、それに伴い水揚げ量も低下傾向にあります。漁期に安定して漁獲できるかどうかが、年間の収入に直結します。

漁期の長さと天候の影響

漁業は自然に大きく依存する産業です。台風や時化による出漁停止は収入機会の損失を意味します。たとえば、2023年夏は台風の影響で2週間以上出漁できなかった事例もあり、その間の売上がゼロとなるリスクを含んでいます。

漁協・市場の出荷価格

同じ魚を獲っても、出荷する市場によって価格が大きく異なります。たとえば、東京や大阪など大都市の市場に直接出荷できる体制を持つ漁師は、通常の1.3倍以上の価格で取引されることもあります。地域内での価格差も大きく、販売戦略が重要です。

燃料・設備などのコスト

漁業には、エンジンオイル、網、氷代、燃料などさまざまなコストがかかります。特に近年は燃料費の高騰が漁師の収益を圧迫しています。出漁1回あたりの経費は平均で1万〜2万円程度とされ、これらのコスト管理が収益に直結します。

国や自治体の補助金制度

補助金の活用は、漁師の経営安定に大きく寄与します。たとえば、

長崎県では燃料費や設備投資に対する支援制度が複数用意されており

、うまく活用することで初期費用や運営負担を軽減できます。補助金の存在を知らずに損をしているケースも多いため、情報収集が重要です。 

五島列島で注目の漁業支援制度と移住支援

長崎県の漁業支援制度とは?

長崎県では、漁業後継者の確保と育成を目的とした支援制度が整備されています。たとえば、「新規漁業就業者育成事業」では、最大年間150万円の研修助成金が交付されるほか、漁船や漁具の購入に対する補助も用意されています。制度の内容は年度ごとに見直されているため、最新情報の確認が大切です。

若者向けの移住・就業サポート

若者の移住を促進するために、五島市では「漁業体験研修」や「お試し移住住宅」の提供を行っています。20代〜30代の移住希望者には、生活支援金(月額最大12万円)も支給される仕組みがあります。実際に、この制度を利用して島外から移住し、漁師として活躍している事例が複数確認されています。

研修・技術習得プログラムの内容

五島列島の各漁協では、新規就業者向けに実地研修を実施しています。内容は、定置網漁や刺し網漁などの基礎から、販売や流通の知識まで多岐にわたります。研修期間は6ヶ月〜1年程度で、地域のベテラン漁師が指導役を担うことが多く、技術だけでなく地域との信頼関係も構築できます。

五島市のUターン・Iターン支援

五島市は、Uターン・Iターン者を対象に、住居確保や生活立ち上げの支援を行っています。空き家バンクの活用や引っ越し費用の一部助成などがあり、

初期費用の負担を軽減できる点が大きな魅力です。

また、自治体職員による生活相談も可能で、孤立しにくい体制が整っています。

実際に移住した漁師の声

福岡から五島へ移住した30代男性の声として、「都会では味わえない自然と人の温かさがある。収入も年々安定してきて、移住してよかった」というコメントがあります。また、移住後3年で年収500万円を超えた例もあり、支援制度と努力次第で十分な生活基盤を築けることがわかります。

五島列島で漁師になるには?ステップと必要スキル

漁業未経験者が参入する方法

五島列島では、未経験からでも漁師になることが可能です。各漁協では「漁業体験プログラム」や「研修付き就業支援制度」が整備されており、まずは短期の体験からスタートする人が多いです。たとえば、五島市の体験制度では3〜5日の短期研修で漁業の基礎を学べます。

必要な資格・装備・準備とは

漁業に従事するうえで必要な資格としては、小型船舶操縦士(1級または2級)が挙げられます。また、潜水漁を行う場合は潜水士資格も必要です。装備については、漁具、GPS、魚群探知機、防水服などが必須であり、初期費用はおおよそ100万〜200万円程度を見込む必要があります。

地元漁協との関係構築

五島列島では、漁協との信頼関係が重要な鍵となります。漁業権の取得や出荷先の確保には漁協のサポートが不可欠であり、日常的な情報共有や行事への参加なども求められます。実際に「最初の1年は地域との信頼作りが8割だった」という移住者の声もあります。

生活コストと暮らしのリアル

五島列島での生活コストは、都市部に比べて家賃や光熱費が安価な傾向があります。たとえば、2LDKの空き家を月2万円以下で借りられる地域もあります。一方で、車が必須、食料品の一部が割高といった面もあるため、全体の生活費は月15万〜20万円程度が目安です。

初期投資と収益のバランス

漁業の初期費用としては、漁船の購入や装備品一式で200万〜500万円程度が必要です。

ただし、自治体や国の補助金を活用すれば最大50〜70%の補助を受けられる場合もあります。

初年度は収益が安定しにくいものの、2〜3年で軌道に乗せれば年収500万円以上も可能です。長期的な視点と計画が成功の鍵です。 

よくある質問(FAQ)

五島列島の漁師は本当に稼げるの?

はい、五島列島の漁師は年収500万〜1,000万円以上を得ている人も実際に存在します。特にクロマグロやイカなど、高単価魚種を狙う漁師や養殖を行っている漁師の収入は安定しています。ただし、漁法や販路、季節によって収益に差があるため、継続的な工夫が必要です。

クロマグロ漁の収入はどのくらい?

クロマグロ漁では、1回の出漁で数十万円の水揚げが見込めることもあります。年間を通じて操業できれば、年収1,000万円超えの実例もあります。ただし、漁獲制限や漁期、燃料費の高騰などにも左右されるため、リスク管理も重要です。

若者や移住者でも漁師になれる?

はい、若者や移住者向けの支援制度が整備されています。たとえば、五島市では研修制度や住居支援、生活費補助などの制度が利用可能です。実際に、他県から移住して漁師として活躍している20〜30代の事例も多く報告されています。

養殖と天然漁業、どちらが儲かる?

どちらにもメリットがありますが、収入の安定性を重視するなら養殖がおすすめです。出荷時期を調整できるため市場価格の高いタイミングを狙いやすく、年間を通じて一定の収益が見込めます。一方で、天然漁業は漁獲に左右されやすく、天候や資源量の影響を強く受けます。

漁業は季節によって収入に差が出る?

はい、大きな差が出ます。たとえば、イカやアジの旬にあたる夏から秋は収入が高まりやすく、冬場は操業回数が減るため収益も下がる傾向があります。そのため、季節ごとに狙う魚種を変えたり、養殖と兼業するなどの工夫が求められます。

家族連れで移住して生活できる?

五島列島は、子育て支援や教育環境も整っており、家族連れでの移住にも適しています。保育料の減免制度や医療費補助もあり、実際に移住者の約4割が子育て世帯です。生活コストが抑えられるため、都市部よりも余裕を持って暮らせるケースも多いです。

まとめ:五島列島の漁師は夢がある職業!

五島列島の漁師という仕事は、ただ魚を獲るだけでなく、地域に根ざし、自然と向き合いながら生計を立てる生き方です。漁業の種類によって年収に差はあるものの、マグロやイカを狙う高収益型の漁法や、直販・SNSなど現代的な工夫により、若手でも年収600万円以上を目指すことが可能です。

また、長崎県や五島市の支援制度も充実しており、移住希望者にとってはチャンスの多い地域です。実際に移住者の声からも「生活コストが低く、子育て支援も充実している」「海が身近で、働きがいがある」といった前向きな意見が多数寄せられています。

漁業は簡単な仕事ではありませんが、その分やりがいも大きく、自然と共存する誇り高い職業です。

安定した年収を得るためには、漁法の選択、販路の工夫、地域との連携など、戦略的な取り組みが必要です。もしあなたが五島列島で新たな一歩を踏み出すことを検討しているなら、まずは漁業体験や制度の確認から始めてみてはいかがでしょうか。

  • 五島列島の漁師は年収500〜1,000万円以上も狙える
  • 高収入には漁法・設備・販売ルートが鍵
  • 移住支援・研修制度が整っており未経験者にも門戸が開かれている
  • 季節・天候・資源に左右されるが、リスク分散の工夫で安定化可能
  • 地域と共に生きる働き方を望む人に最適な選択肢
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