しそ農家の年収とは?この記事で分かること

しそ栽培に興味はあるけれど、「実際にどれくらいの収入になるのか分からない」と悩んでいませんか?農業の世界は、作物によって収益性が大きく異なるため、しそ農家としての年収事情を正しく知ることが、将来の選択において非常に重要です。

実際、「年間で300万円前後」といった声がある一方で、直販や加工によって年収1000万円を超える農家も存在します。農業は経験や販路、工夫次第で収益が大きく伸びる分野です。

筆者も地方で農業を営む知人から「しそは栽培サイクルが短く、管理が比較的ラク。うまく回れば安定収入になる」と聞いた経験があります。しかし収支のバランスや工夫の有無によって、差が大きく出るのが現実です。

しそ農家として成功するには、「どのように利益を伸ばせるか」を知ることが第一歩です。

この記事で分かること

  • しそ農家の平均年収と現実的な収益モデル
  • 年収に大きく影響するコストとその内訳
  • しそで利益を最大化するための5つの戦略
  • 実際に成功しているしそ農家のリアルな事例
  • 他の作物との収益比較で見える「しその強み」

しそ農家の平均年収はどのくらい?

しその市場規模と需要の推移

しその市場は安定したニーズがあります。特に近年では、健康志向の高まりにより薬味や健康食材としての注目が増しています。農林水産省のデータによれば、しその国内需要は年間約2万トンで推移しており、安定した供給体制が構築されています。飲食店やスーパー、生鮮品EC市場を中心に需要が継続している点が特徴です。

しそ農家の平均年収データ(統計・農水省などから)

農林水産省や農業経営統計によると、しそ農家の平均年収はおおよそ250〜400万円と言われています。これは規模や販路によって大きく差があります。たとえば、地元直売所中心の小規模経営では年収200万円程度、大手スーパーや外食チェーンと契約している中〜大規模農家では年収600万円を超えるケースもあります。

小規模農家と大規模農家の年収差

小規模農家では、家庭経営が中心のため収入は限られがちです。一方、大規模農家は設備投資や販路開拓によって年収に大きな差をつけています。例えば、10a(アール)未満で運営する農家では年商150万円未満の例もありますが、1ha以上の規模になると年商1,000万円を超えるケースも報告されています。

地域別で異なる年収の傾向

気候や出荷先の利便性により、年収には地域差もあります。たとえば、愛知県や大分県などはしその主産地として知られており、出荷量やブランド化の取り組みにより収益が安定しています。都市近郊の農家は販路の多様化が可能で、直売や契約出荷によって年収が高くなる傾向があります。

年収に影響する外的要因(天候・流通など)

しそは比較的育てやすい作物ですが、天候不順や害虫被害が発生すると収穫量が落ち、年収に直結します。また、

流通先の価格変動や人手不足による収穫作業の遅れも、収益を下げる大きな要因になります。

安定した年収を確保するためには、病害虫対策や契約販売などのリスクヘッジが欠かせません。 

年収を左右するしそ栽培のコストとは?

苗代・肥料・農薬などの原価一覧

しそ栽培の基本コストとして、苗代は10aあたり約1〜2万円が相場です。肥料費は有機質を使用する場合、年間で3万円前後になることが多く、農薬に関しても病害虫対策で年に1万円程度かかるとされています。これらの基本的な資材コストは年収に直結する部分です。

機械設備やハウス導入の初期費用

機械化によって作業効率は上がりますが、初期費用は大きな負担となります。たとえば、小型トラクターや動力噴霧器などを揃えると、50〜100万円の出費が発生します。また、ビニールハウスを設置する場合、10aあたりで200万円以上の初期投資が必要です。長期的な視点で収益とのバランスを検討すべきでしょう。

人件費や外注コストの実態

しその収穫は手作業が中心となるため、人手が必要です。パート従業員を雇用する場合、月に数万円〜十数万円の人件費が発生します。特に繁忙期には外注費が全体コストの30%以上を占めるケースもあります。家族経営で賄えるかどうかが、収益を左右する大きなポイントです。

出荷ルートごとの流通コスト

出荷先によって流通コストは大きく異なります。農協を通じた場合は手数料が10〜20%発生し、利益率が下がります。対して、直販やネット販売であれば手数料を抑えられるため、収益性が高くなる傾向があります。ただし、自力で販売網を確立するには時間と労力が必要です。

農協出荷と直販の利益率比較

農協を通じた出荷では安定供給が可能な一方で、1束あたりの利益は30〜50円程度にとどまることもあります。一方、直販であれば1束あたり100円以上の利益を確保することも可能です。ただし、販促活動や受注管理といった作業負担が増える点には注意が必要です。

しそ農家の収益を最大化する5つの秘策

直販やネット販売の活用

しその収益性を上げるには、販路の多様化が欠かせません。特に注目すべきは直売所やオンラインショップでの直接販売です。農協を通さず販売することで、中間マージンを削減でき、1束あたりの利益が2倍以上になることもあります。近年では、InstagramやBASEなどの活用により、地方から都市部への販売も容易になっています。

高付加価値商品(乾燥しそ・加工品)の開発

収穫したしそをそのまま売るのではなく、乾燥しそ・しそふりかけ・しそジュースなどに加工することで、単価を大きく引き上げられます。たとえば、乾燥しそは100gで1,000円前後の価格が付き、保存性にも優れています。設備があれば、自家加工で利幅をさらに広げることも可能です。

農業法人化による規模拡大と効率化

個人経営から農業法人に移行することで、経理や労務管理が明確になり、補助金の申請や大口契約もスムーズになります。また、法人化により人材の雇用や設備投資がしやすくなるため、面積拡大や通年供給体制の構築が可能になります。法人化したしそ農家の中には、年間売上3,000万円以上を達成している事例もあります。

観光農園や体験型農業の導入

農業体験や観光農園の形でしそ栽培を提供するスタイルも注目されています。たとえば「しそ摘み体験」や「オリジナルふりかけ作り体験」など、都市部の家族層をターゲットにしたイベントが人気です。入園料+物販での二重収益構造が可能となり、農地を有効活用できます。

農業補助金・助成金の活用

設備投資や販路拡大を進めるうえで、国や自治体からの補助金は強力な支援となります。「経営体育成支援事業」「強い農業づくり交付金」などを活用することで、

初期費用の50〜70%が補助対象になる場合があります。

申請には事業計画の作成が必要ですが、農業改良普及センターなどがサポートしてくれる地域もあります。 

実際にしそ農家で成功している事例紹介

年収1000万円超の農家インタビュー

静岡県磐田市で営農する40代男性は、年間で約1,200万円の売上を達成しています。農協に頼らず、レストランや自然食品店との直接取引を強化したことが収益増につながったとのことです。また、自社加工所を設け、ふりかけやジェノベーゼなどの加工品も展開しています。

有名直売所やECサイトでの販売成功例

熊本県の「道の駅旭志」では、地元のしそ農家が収穫した葉を使った特産品が人気です。また、楽天市場や食べチョクなどのECサイトを活用して、月商30万円以上を維持する個人農家も増加しています。口コミやSNS連動での販促も鍵となっています。

地元飲食店との連携による販路拡大

愛知県豊橋市の農家は、地元の居酒屋チェーンと契約を結び、年間を通じて安定した収入を確保しています。飲食店は品質と安定供給を重視するため、信頼関係を築くことでリピーターとしての継続取引が可能になります。

6次産業化(栽培+加工+販売)モデル

長野県の事例では、農家が自ら加工品を製造・販売する6次産業化を導入し、収益の柱を増やしています。「しそシロップ」や「しそゼリー」などの商品展開が好調で、観光客向け土産品としての売上が年間200万円以上に達しています。

SNS活用でブランディングに成功した事例

兵庫県丹波市の女性農家は、InstagramとYouTubeを活用し、栽培の様子やレシピを日々発信しています。

SNS経由でのECサイト流入が全体売上の6割を超える月もあり、集客効果は絶大です。

フォロワーとの信頼関係が、ブランド価値を高める武器となっています。 

他の野菜・ハーブ農家との年収比較

バジル・ミント・パクチーなどとの収益性比較

しそと同じく香味野菜に分類されるバジルやミント、パクチーは、いずれも高い収益性を持つ作物です。特にバジルは飲食業界での需要が年間を通じて安定しており、10aあたりの収益は約50〜70万円とされています。一方、しそは年間3回転以上の収穫が可能なため、同規模で80万円を超えるケースもあり、競争力は高いです。

葉物野菜(小松菜・ほうれん草)との単価比較

小松菜やほうれん草は出荷単価が安定している反面、価格の上下動が大きく収益が読みにくい傾向があります。しそは1束あたりの出荷単価が30〜50円前後で推移しており、天候に左右されにくい点が強みです。収量の安定性と作付け頻度の高さを踏まえると、短期回収型の野菜として優位性があります。

単位面積あたりの利益率ランキング

農水省のデータを元にした分析によると、10aあたりの利益率でしそはトップ10に入る作物の1つです。施設栽培や高密度栽培を取り入れることで、年間100万円以上の利益も可能とされています。同じ面積でも収穫回数が多いため、作物ロスを最小限に抑えられることが背景にあります。

栽培難易度と収益の関係

しその栽培は比較的難易度が低く、家庭菜園レベルから始めることも可能です。これは、初心者が参入しやすい利点でもあります。一方で、パクチーやミントは病害虫管理や栽培環境の調整に手間がかかることから、管理コストが高くなりがちです。結果として、しそは収益性と労力のバランスが良い作物といえます。

専業と兼業農家での違い

しそ農家の年収は、専業か兼業かによって大きく異なります。専業の場合、出荷量・取引先・販促活動すべてに注力できるため、年収500〜800万円の実例もあります。一方で兼業農家は、

時間的制約から販売量や販路が限られ、平均年収は200〜300万円にとどまる傾向があります。

ただし、副収入源としては優秀で、コストパフォーマンスの高い選択肢です。 

よくある質問(FAQ)

しそ農家は副業でも成り立ちますか?

はい、しそ栽培は短期間で収穫が可能な作物であるため、副業としても十分に取り組めます。10a以下の小規模農地であれば、平日の朝夕や週末だけの管理でも対応可能です。実際に、兼業で月5万円以上の副収入を得ている農家も存在します。ただし、販路の確保が収益性を大きく左右する点には注意が必要です。

しそはどの時期に売上が伸びやすいですか?

しその需要が最も高まるのは6月から9月にかけての夏季です。薬味としての利用が増える時期であり、市場価格もこの時期にピークを迎える傾向があります。このタイミングに合わせて播種・定植を行えば、効率的に収益を伸ばすことが可能です。

無農薬で栽培すると利益は下がりますか?

無農薬栽培は手間がかかる分、収穫量が若干減少することがありますが、販売価格を高く設定できるため、必ずしも利益が下がるとは限りません。有機栽培や自然栽培で差別化することで、1束あたりの単価を1.5〜2倍に設定しているケースもあります。

直売所とスーパー、どちらが儲かりますか?

それぞれに特徴がありますが、利益率で見ると直売所の方が高い傾向にあります。スーパーは大量出荷による安定性が魅力ですが、販売価格に対する手数料やロスも発生します。直売所では新鮮な状態で売れるうえ、消費者の反応をダイレクトに得られるため、付加価値をつけやすいです。

新規就農でしそを選ぶのはアリですか?

しそは初期投資が比較的少なく、省スペースでも栽培可能なため、新規就農者にとっては適した作物といえます。農業未経験からスタートし、3年目で年収400万円以上を実現した事例もあります。ただし、販路構築やブランディングの工夫が成功の鍵を握ります。

海外輸出でのチャンスはありますか?

はい、近年ではアジア圏を中心に和食需要が高まり、

しそを含む日本の香味野菜の輸出が増加しています。

特に冷凍しそや乾燥しそなど、保存性の高い商品が注目されています。農水省の支援制度や輸出企業との連携を活用すれば、海外市場への参入も現実的な戦略となります。 

まとめ:しそ農家の年収を上げるために必要な視点とは

しそ農家として安定した収益を得るには、単に栽培するだけでなく戦略的な経営判断が求められます。市場価格の動向を把握し、収穫時期を調整するだけでも利益に差が出ます。

また、直販・ネット販売・加工品化・法人化など、多角的なアプローチを組み合わせることで収益性を高めることが可能です。特に初期投資を抑えつつも高回転が可能なしそは、新規就農者や副業層にとって非常に魅力的な作物です。

さらに、地域や気候条件に適した栽培方法を選ぶことで、リスクを減らし安定収入を得る体制を築くことができます。自分に合ったスタイルで挑戦する柔軟さが成功の鍵と言えるでしょう。

利益を最大化するには「育てる力」だけでなく、「売る力」も重要です。

  • 平均年収は250〜400万円。工夫次第で1000万円超も可能
  • コスト管理と販路戦略が収益を左右する
  • 実例に学びながら、直販・加工・法人化を検討
  • バジル・パクチーなど類似作物との比較でもしそは優位性あり
  • 初心者でも始めやすく、補助金活用でリスク軽減も可能
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