ハーブ農家の年収はいくら?この記事で分かること

ハーブを育てる仕事に興味があるけれど、「実際にどのくらい稼げるの?」「本当に生活していけるの?」と疑問に思う方は多いです。近年、ハーブ農家は高収益を狙える分野として注目されています。しかし、年収には大きな個人差があり、成功するには明確な戦略と知識が必要です。

ある調査では、小規模農家でも年間500万円以上を売り上げる事例が増えてきており、地方でも新規就農者が着実に増加しています。こうした背景には、健康志向の高まりやオーガニック製品へのニーズの拡大があります。

とはいえ、全ての人が必ず稼げるわけではありません。適切な販路の選定やハーブの種類選び、さらにマーケティング力が求められるのが現実です。

安易に「儲かる」とだけ考えるのは危険です。成功している農家には、共通するノウハウと努力の積み重ねがあります。

この記事で分かること

  • ハーブ農家の平均年収とその内訳
  • 高収益を実現している農家の具体例
  • 儲かるハーブの選び方と市場動向
  • 就農までのステップと必要資金
  • 失敗しないためのポイントと成功の秘訣

ハーブ農家の年収の実態とは?

平均的なハーブ農家の年収

ハーブ農家の平均年収は、規模や販路によって大きく異なりますが、全国平均では300万円〜500万円前後が一般的です。都市部近郊で直販やイベント出店を行っている農家は、より高い収益を得ている傾向にあります。

栽培面積が小さくても高単価で販売できるハーブは、効率的に利益を出しやすい作物として注目されています。

新規就農者とベテラン農家の収益の違い

新規参入したばかりのハーブ農家では、年間収益が100万円以下にとどまるケースも少なくありません。経験不足により、販路開拓や品質管理で課題を抱えることが多いためです。

一方で、10年以上の経験を持つベテラン農家は、複数の販路とリピーター顧客を確保し、年収800万円を超える事例もあります。

自家栽培 vs 契約栽培の収益差

契約栽培は収益が安定する反面、単価が低く利益率が下がりやすいです。自家栽培による直販や加工品販売では、高単価・高利益のビジネスが可能になります。

たとえば、ローズマリーを乾燥させた茶葉やアロマ用素材として販売する場合、キロ単価は契約出荷の2〜3倍になることもあります。

地域別に見る年収の差

ハーブ栽培は気候や立地の影響を受けるため、地域差が大きいです。九州や関西では通年出荷が可能なエリアが多く、年収が安定しやすいとされています。

一方で、寒冷地では栽培期間が限られ、設備投資も必要になるため、収益性はやや低めです。ただし、冷涼な気候を活かして高品質ハーブを育てることで差別化できる可能性もあります。

農協やJAを通じた販売の収益傾向

農協やJAを通じた出荷は販路が安定している一方で、中間マージンが発生しやすく利益率は低くなりがちです。

JA経由ではラベンダーやミントなど特定の品目に限られるケースも多く、品目の選定にも制限がかかります。収益最大化を目指すには、個人販売や加工品販売の併用がカギです。

販売チャネルの選定を誤ると、せっかくの収穫が低価格で取引されてしまうリスクがあります。

ハーブ農家が儲かると言われる理由

初期投資と運用コストの安さ

ハーブ栽培は設備投資が比較的少なく済む点が魅力です。特に露地栽培で始める場合は、ビニールハウスや高額な農機具を使わずにスタートできるため、初期費用を50万円以内に抑えることも可能です。

ランニングコストが抑えられるため、売上が少ないうちでも事業継続がしやすいという利点があります。

栽培期間が短く回転率が高い

ハーブは野菜に比べて栽培期間が短く、1年で複数回の収穫が可能な種類もあります。バジルやルッコラなどは、種まきから収穫まで約30〜60日とスピーディです。

年間で複数回転できることで収益機会が増えるため、小規模農家でも安定した収益を期待できます。

高付加価値での販売が可能

ハーブはそのまま出荷するだけでなく、ドライ加工やアロマ製品としても販売可能です。たとえば、ラベンダーはポプリや精油として加工することで、1束数百円から1,000円以上に価値を高めることができます。

商品の多様化が収益アップにつながるのがハーブ農家の強みです。

飲食・美容・健康業界など販路が広い

ハーブは食品としての需要だけでなく、化粧品原料や健康食品の素材としても活用されます。特にオーガニック志向が高まる中、ハーブの需要は飲食店・エステサロン・製薬会社など多方面にわたっています。

多様な販路を持てることで、景気変動の影響を受けにくいのも特長です。

オーガニック志向の追い風

近年のオーガニック市場の拡大は、ハーブ農家にとって大きなチャンスです。2023年の国内オーガニック市場は前年比12%増と報告されており、安心・安全志向の高まりが需要を後押ししています。

ただし、オーガニック認証の取得には時間とコストがかかるため、計画的な導入が必要です。

実際に稼いでいるハーブ農家の成功例

有名ハーブ農園の成功事例(例:生活の木 薬香草園)

埼玉県飯能市にある「生活の木 薬香草園」は、全国的にも知られるハーブ専門施設です。直営店舗やカフェ、講座などを組み合わせた複合施設で、観光客や愛好家から高い評価を受けています。

農園としての収穫販売だけでなく、体験型サービスを通じて収益を多角化している点が特徴です。年商数千万円規模とも言われ、ブランド力の重要性がうかがえます。

地方で注目される若手農家の取り組み

熊本県の若手農家・西村さん(仮名)は、わずか30aの農地でハーブを栽培し、月収30万円以上を達成しています。地元カフェやマルシェと提携し、収穫即出荷のフレッシュハーブ販売に注力しているのが成功のカギです。

地方でも販路を工夫すれば、高収益を狙える好例といえます。

SNSや直販でのブランド確立

Instagramを活用して全国の顧客とつながっている事例も増えています。滋賀県の女性ハーブ農家は、ハーブの育成日記やレシピ投稿でフォロワーを獲得。月間50万円以上の売上をオンライン販売だけで実現しています。

SNS発信はコストがかからず、個人農家でも挑戦しやすい販促手段です。

ハーブ体験や観光農園の併用モデル

体験型観光農園は、家族連れや観光客の集客力が高く、安定収益を得やすいモデルです。北海道富良野の「ファーム富田」は、ラベンダー畑の観光と加工品販売を組み合わせて、年間100万人超の来場者を誇る人気施設です。

農業だけに頼らず、体験や観光を融合させる戦略が成功のカギとなります。

自社製品展開で収益を多角化した例

東京都内の小規模農家が、自家製ハーブを使ったオリジナルコスメを開発・販売した事例も注目されています。クラウドファンディングで300万円以上を集め、ブランドを立ち上げました。

「育てる→加工する→売る」の一貫型ビジネスは収益の幅を広げるうえで非常に有効です。

ハーブ農家として成功するために必要なスキルと知識

栽培技術とハーブの基礎知識

成功するためには、ハーブの種類ごとの育て方や病害虫の対策、収穫のタイミングなどを正しく理解することが必要です。たとえば、ローズマリーは乾燥を好みますが、バジルは水分を多く必要とします。こうした性質の違いを把握していないと、生産量や品質に大きな差が出ます。

適切な肥料や土壌pHの管理も収益を左右する重要な要素です。

マーケティングとブランディング力

収益化には栽培だけでなく「売り方」も非常に重要です。ターゲット顧客を明確にし、商品の魅力を伝えるパッケージやコピーライティングを工夫することで価格競争を避けられます。

SNSやブログを活用してファンを増やすことも、リピート率向上に繋がります。

ネット販売とSNS運用スキル

個人農家でもECサイトでの販売は主流となりつつあります。BASEやSTORESなど無料で始められるサービスを活用すれば、初期費用を抑えながら全国に商品を届けることが可能です。

また、InstagramやX(旧Twitter)などSNSでの発信を通じて、商品や農家自身のストーリーを伝えることで、差別化が図れます。

法規制やオーガニック認証への対応

ハーブを食品や化粧品原料として販売する際には、食品衛生法や薬機法などの知識が欠かせません。特に加工品を扱う場合は、加工場の許可や成分表示の義務など、法的な条件をクリアする必要があります。

また、オーガニック表示をするには「有機JAS認証」の取得が必要です。審査基準や申請コストが発生するため、事前に情報収集を行いましょう。

BtoB取引への営業・交渉力

個人消費者向けの直販だけでなく、飲食店や化粧品メーカーとの取引も安定収入を得る手段です。しかし、継続的な取引を実現するには信頼関係と交渉力が不可欠です。

納期の厳守や品質の安定化、価格の交渉術など、ビジネススキルの習得もハーブ農家の成功には欠かせません。

「作るだけ」の姿勢では生き残れない時代です。販路拡大のためにも、対人スキルの習得が求められます。

儲かるハーブの種類と市場ニーズ

人気の高いハーブベスト5

市場で安定した需要があるのは、以下の5種類のハーブです。

  • ラベンダー:香りが強く、アロマ・クラフト・観賞用に幅広く活用
  • ローズマリー:肉料理用のスパイスとして飲食店に人気
  • ミント:清涼感があり、菓子・ドリンク・化粧品業界に需要
  • バジル:イタリアン食材として生鮮流通も活発
  • カモミール:リラックス効果が高く、ハーブティーに使用

これらは栽培難易度が比較的低く、初心者にもおすすめです。

薬用・美容・食用における需要の違い

同じハーブでも、用途によって求められる品質や販売ルートが異なります。たとえば薬用のエキナセアは濃度や抽出方法が重要視され、美容用では無農薬栽培が求められるケースが多いです。

一方、食用のパセリやバジルなどは、見た目の鮮度や香りの立ち方が購入の決め手になります。用途を意識した育て方が重要です。

日本国内と海外市場での人気傾向

日本国内では、料理やハーブティー向けのハーブが主流ですが、海外では医療やサプリメント向けの需要が非常に高いです。特にドイツやアメリカでは、ハーブサプリ市場が年率7%以上で成長しています。

輸出を視野に入れる場合、GAP認証や有機JASなどの国際基準への対応が求められます。

季節による需要の変動

ハーブの需要は季節によって大きく変動します。たとえば、夏はミントやレモングラスなどの爽快感のある品種が売れやすく、冬はカモミールやジンジャーなど身体を温める種類が好まれます。

計画的な栽培と出荷時期の調整が、売上の波を抑えるポイントです。

高単価ハーブの特徴と選び方

高単価で取引されやすいハーブには共通点があります。それは「加工用途が広い」「栽培者が少ない」「機能性が高い」の3点です。例として、ベルガモットやセントジョンズワートは1kgあたり数千円で流通することもあります。

市場の隙間を狙える希少品種を取り入れることが差別化の鍵です。

ハーブ農家になるためのステップと必要資金

就農に必要な資格や手続き

ハーブ農家になるために特別な資格は不要ですが、農地の取得や農業委員会への届け出は必須です。新規就農者は「青年等就農計画制度」を活用すれば、自治体から支援を受けられる場合もあります。

地域によって必要な手続きが異なるため、事前に市町村の農業委員会に相談することが重要です。

初期費用の目安と資金調達方法

ハーブ農家として始める際の初期費用は、土地の有無や設備内容によって異なります。目安としては以下の通りです。

  • 小規模(30a程度・露地栽培):50万〜100万円
  • ハウス栽培+加工設備導入:200万〜400万円

資金調達には「日本政策金融公庫」や「農業次世代人材投資資金」の利用が有効です。

農地の探し方と選び方

農地は農地バンクや自治体の農業支援センターを通じて探すことが一般的です。水はけ・日当たり・アクセスの良さを重視することで、栽培効率が大きく変わります。

特に都市近郊は販路との距離が近いため、直販や観光農園に向いた立地として人気があります。

初心者におすすめの栽培方法

初心者には露地での小規模栽培が始めやすくおすすめです。たとえば、バジルやミントは短期間で収穫可能で、管理も比較的簡単です。1㎡あたり数百円〜数千円の収益を得られることもあります。

まずは数品種に絞り、市場ニーズに合ったハーブを選定することが成功の近道です。

支援制度や補助金の活用方法

国や自治体には新規就農者向けの補助制度が多数あります。例として「農業次世代人材投資資金(準備型)」では、年間最大150万円が給付されます(2024年度時点)。

ただし申請には就農計画書や研修参加が求められるため、事前準備が欠かせません。

その他にも、女性・若者・移住者向けの支援策も増えており、地域に合った制度を活用することが重要です。

よくある質問(FAQ)

ハーブ農家は副業でも始められますか?

はい、副業としてハーブ農業を始めることは可能です。特に自宅の庭やベランダを活用することで、初期費用を抑えてスタートできます。実際に、平日は会社勤務、週末はハーブ栽培という生活スタイルの人も増えています。

ただし販路や出荷作業のスケジュール管理は要注意です。本格的な出荷を考えるなら、時間配分と作業効率の見直しが重要になります。

年収1000万円は本当に可能ですか?

可能ですが、簡単ではありません。1000万円超えを実現している農家は、栽培・加工・販売・体験サービスなど多角的なビジネス展開をしています。

例えば、観光農園+ハーブ加工品販売+SNS経由の定期購入モデルを活用することで、月収80万円以上を安定的に得ている事例も存在します。

単一の収益源だけでこの金額を目指すのは困難です。

ハウス栽培と露地栽培、どちらが儲かる?

それぞれにメリット・デメリットがあります。ハウス栽培は天候に左右されにくく通年出荷が可能ですが、初期費用とランニングコストが高くなります

一方、露地栽培はコストが低い代わりに気候リスクが大きいです。収益性で見ると、適地・適作であれば露地栽培でも十分利益を出せます

自宅の庭で始めるにはどうすればいい?

まずは育てやすい種類からスタートしましょう。バジルやミント、ローズマリーは初心者に人気です。必要な道具は以下の通りです。

  • プランターまたは小型畑スペース
  • 水はけの良い土壌
  • 園芸用ハサミ・支柱

少量でもネット販売やマルシェ出店で利益を出す人もいます。収穫量より「品質」や「ブランド力」で勝負することがポイントです。

失敗しやすいポイントとその回避法は?

初心者がつまずきやすいのは「販路不足」「病害虫管理の甘さ」「需要と合わない品種選定」です。特に販路がないまま栽培を始めると、収穫後に売れずに在庫を抱えるリスクがあります。

事前にマーケットを調査し、小ロットでテスト栽培することでリスクを軽減できます。

天候不順や病害虫への対策はどうする?

ハウス栽培やマルチング資材の活用、排水性の確保などが基本的な対策です。さらに、害虫に強い品種の選定や天敵昆虫の導入も効果的です。

過去には長雨による根腐れ被害で出荷量が3割減少した事例もあります。リスク分散のために複数品種を育てることも重要な戦略です。

まとめ:ハーブ農家は工夫と戦略で高収益も可能!

ハーブ農家として成功するためには、単に栽培するだけでなく、販路戦略・ブランディング・多角的な収益モデルの構築が求められます。

以下のポイントを押さえることで、初心者でも堅実に利益を伸ばすことが可能です。

  • 平均年収は300万〜500万円だが、上位層は1000万円超も現実的
  • 人気の高いハーブを選定し、用途に応じて栽培・販売を工夫する
  • SNSやECを活用して販路を広げることがカギ
  • 観光農園・加工品・BtoB取引など、多角的に展開することで安定収入に
  • 国の支援制度や補助金を活用すれば、資金面でのハードルも下がる

「作って終わり」の農業から、「魅せて売る」農業へ。

環境にやさしく、ニーズのあるビジネスとして、ハーブ農家は今後さらに注目される存在になるでしょう。 
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